マイコン BASIC Magazine 1988/10号より〜
ドラスピ完成インタビュー

いかにこの『ドラスピ』がX68000に移植されたのか!
ここらへんのさぐりをいれるためにボクは8月某日,電波のソフト開発室に潜入を
敢行しました(なんだかどっかで聞いたことあるなあ…)。
ボクを迎えてくれたのは,『ドラスピ』の開発を担当しているなにわさん。ようやく
開発を終えてほっとしたというようで,68では『ドラスピ』が動いていました。
さっそく,なにわさんは『ドラスピ』にかける思い入れをこう語ってくれました。

なにわ:「ドラスピはビデオゲームの中でもかなり完成度が高くプレイヤーにも
 人気がありますからね。それなりにプレッシャーもありましたが,ユーザーには
 X68000ならではの完璧な移植版として楽しんでもらいたいので『ゼビウス』
 『源平』のときに得たノウハウを結集して作りあげました」

川野:今までこのコーナーで紹介しているように『ドラスピ』はほんとに完璧なデキ。
 なにわさんが言うだけのことはあります。でも実際にアーケード基板とX68000
 ハード的ちがいは,どこにあるのでしょうか。まったく同じハードでは移植と言って
 も自慢になりません(?)。そこらへんをなにわさんに聞いてみました。
 まずグラフィック画面について見てみましょう。
 話によれば,アーケード版のグラフィック画面は288×224ドット。68のほうは
 おなじみの256×256ドットですね。ドット数から言えば68のほうが,1,000ドット
 ほど多いのですが,縦横の比がちがうので.グラフィック・データをそのまま
 移植したのでは絵が歪んでしまいます。
 それから,色について言うとアーケードは26万色なのに対して68は6万5千色
 です。これはかなりの差があります。でも写真で見くらべても全然,その差は
 わかりませんね。多少ドットが粗く見えますが,写真でなく実際にスクロール
 しているところを見るとまるでわからない。人間の目とはけっこういいかげんな
 ものです。
 では,スプライトについてはどうでしょうか?68は16×16ドットのパターンが
 1画面に128個,横に32個まで並べることができます。一方アーケードは
 32×32ドットのパターンが1画面に128個です。つまりこれもアーケード基板の
 ほうが機能が上ってことです。
 しかし,なにわさんの話ではザウエルなどの多関節キヤラが画面にでてきた
 ときでもブルードラゴンのスプライト(頭,胴,尾×2=四つ)を入れて22個,
 自分の弾やザウエルのブーメラン(?)を合わせても32個に十分おさまるので,
 スプライトが消えることはないそうです。ただ,縦画面でプレイする場合では
 ディスプレイの横方向にキャラクターが多く表示されることになるので、弾を
 多く撃ったりすると ザウエルのところでキャラクターが消える可能性がある
 ということです。グラフィックについて、なにわさんはこう続けます。

なにわ:「アーケードは288×224ドットのグラフィック画面を4杖持っていて,
 その間にスプライトを自由に入れたりすることができるんです。でも68は
 256×256ドットのグラフィックが2枚,そしてBG(注:X1でいうPCGの
 ようなものでグラフィック画面のように絵を描くことができないが8×8の
 パターンを置くことができる)が1枚あるだけで,しかもグラフィックと
 グラフィックの間にスプライトを入れることができません。ですから、3面の
 ジャングルや9面の口(?)の部分を表現するのに苦労しました。グラフイック
 からBGですからね。大変でした、ほんとうに」


川野:なるほど,聞いてみるとその努力が並大抵のものではないことが
 わかります。でもそのおかげで3面でもまったく違和感がなく仕上がって
 います。う〜んさすがだ…。
 では今月まで姿を隠していたボスキャラはいったいどのようになっているので
 しょうか。ザコキヤラはちゃんと動いてもボスキャラは動かないのではないか…
 と思っている人がいないとも限りません。でもご安心を。写真のように
 アーケード版と、寸分たがわぬ(かもしれない)キヤラは,堂々と動いて
 います。なにわさんの苦労もうかがえます。そこで話しを聞いてみるとやはりと
 いった感じで感情のこもった答えが返ってきました。

なにわ:「ボスキャラはほんまにつかれました(おっと大阪弁がでた!)。
 とくに1面のプレシオザウルスがね。ほんものは足と首をスプライトで,胴と
 頭はグラフィックで表示しているのですが、68は頭にグラフィックが使えません
 そこでBGを使うことになったのですが、ボスキャラでも一番はじめのやつ
 だっただけに、こいつがなかなか言うことを聞かなくてねえ(といって68を
 指差す)。でもできてしまうとあとはトントン拍子で2面のボスなんか2時間で
 できてしまったんですよ」


川野:なかなかすごいことを、平気で言ってくれるものです。7面のボスも結構
 苦労したそうですが,ボスキャラ10匹をすべて2週間で作りあげたというので
 驚きです。今回源平ののぼりじゃないけど特製ペナントが付いています。
 オマケにしては豪華なものです。ま,部屋にかけてやってくださいな。
 最後に、なにわさんがボソッと言った
「もう当分はパソコンを見とうない!!」
 の一言が,このゲームに傾けた情熱を物語っていました。おつかれさま!!